
聖帝十字陵付近の一角を見張る一人の正規兵。彼を大きな影で覆い、恐怖に慄かせ、そして踏み潰したのは、あの黒王号であった。もちろんその背に跨るは、世紀末覇者拳王。着々と侵攻を続ける聖帝軍の視察へと訪れたのだ。ケンシロウ戦で受けた傷が拳王の動きを止めている現在。それは、サウザーが勢力を伸ばすには絶好の機会と言えた。今のうちに走るがいい。俺はまた帰ってくる。サウザーの権力の象徴、聖帝十字陵に背を向け、拳王は再び荒野へと消えた。
荒野を見渡す一人の男。彼もまた、聖帝正規軍を目指すならず者であった。先程チラリと視界に映った子供の姿を追い、やってきたのだ。近くの小屋から気配を感じた男は、戸を蹴破り中へと侵入。中に居た女性が、必死でひとつの木箱を守ろうとする姿は、男に子供の居場所を教えているようなものであった。あっという間に息子・タカを見つけられ、抵抗空しくタカを連れ去られる母親。しかしそれは彼女の思惑通りだった。タカの入っていた箱の下に空けられた穴には、更に五人もの子供が隠れていた。母親は、涙をのんで年長者のタカを犠牲にし、他の五人を守ったのである。だが命をかけたその作戦も、ハイエナの鼻には通じなかった。窓の外にいたもう一人の男に、全てを見られてしまっていたのである。母親の涙ながらの訴えにツバを吐き掛けるかのように、無慈悲に子供達を抱えて立ち去ろうとする男。しかし、その行く手を阻んだのは、怒りに燃えるケンシロウであった。全ての子供を置いてゆくよう命じられた男は、懐の銃でケンを殺そうと試みる。だがケンの拳は、引き金を引く間も与えずにその銃を弾き飛ばし、更に男の顔に裏拳を叩き込んだ。もがく男にその銃を構え、散々脅かせた後、銃を捨てて背を向けるケン。チャンスとばかりに再び銃を手にとる男であったが、彼の命は、一度殴られたときに既に終わっていたのであった。
南斗白鷺拳のシュウ。自らをそう名乗った男の両目の上には、深い傷跡が走っていた。彼は、その目を闇に閉ざされた、盲目の闘将だったのである。されど心の目は開いている。そう言ってシュウは、ケンとの戦いを所望して来た。腰に隠していた双頭のモーニングスターを取り出したシュウは、ケンの返事を待たずして攻撃を開始。この男も乱世に野望をかける男なのか。放たれた鉄球をあっさりと破壊し、ケンもまた戦闘体勢に入る。しかしケンは、シュウに漂うどこか違った雰囲気を感じ始めていた。
ケンには負けることは許されなかったのだ。そして、世を拾うほどの力を持つ拳、北斗神拳の力を、この後シュウは十分に思い知ることとなった。南斗紅鶴拳奥義、伝衝裂波。ユダがレイを切り刻んだあの奥義を、突如ケンが使い始めたのである一度見た相手の拳を身につけることのできる、北斗神拳の奥義、水影心であった。地の裂ける音が盲目のシュウに恐怖を誘う。恐怖は気配を誘い、そして二度とシュウが間合いをつかめることはなかった。簡単に背後を許したシュウに、ケンの一撃が飛ぶ。そして惨めに倒れこんだシュウにすかさず止めの一撃を放ち、勝負は決した。だが、ケンの拳はシュウの顔の寸前で止まっていた。| [漫画版との違い] ・バット達が聖帝正規軍に襲われ、シュウに助けてもらうシーン追加 ・聖帝に怯える村をケンが通りかかり、襲われかけるイベント追加 ・原作ではタカを拐った男は、母がタカを隠すシーンを見ていたが、アニメでは勘でタカの居場所を発見。 ・タカを拐った男は、原作では壁をぶち壊して入ってきたが、アニメでは戸を壊して入った。 ・アニメでは拐われたタカがケンに救われ、母の元へと返される ・原作のケンはタカの母に聖帝の正体を聞くが、アニメでは安全な場所へ逃げろと忠告する。 ・原作のブルの部隊はケンを直ぐ近くで取り囲むが、アニメでは遠巻きの岩陰から ・ケンの水影心の技を、原作では南斗聖拳と呼ぶが、アニメでは南斗紅鶴拳と断定。 |
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